宗次ホールは310席ととても小さなホールなので、フルオーケストラよりも弦楽四重奏などの小さな編成で1つずつの楽器の音を楽しむような曲において最もホールの特性を生かせると思っています。
これまでも、プラジャーク弦楽四重奏団、澤クヮルテット、クァルテット・アルモニコ、ジュピター弦楽四重奏団、カードゥイッチ弦楽四重奏団など錚錚たるグループが記憶に残る演奏を繰り広げてくれましたが、7/11に登場する「クス弦楽四重奏団」も大変期待のもてるヨーロッパでも評判の高いグループです。
世界中を飛び回りながら年間約80回の公演を行うクス弦楽四重奏団は、特にクラシック音楽の中でも「難しい」「つまらない」と思われがちな弦楽四重奏という分野のイメージを塗り替えようと独自の活動を行っていることで有名です。「挑戦的かつ挑発的」などと評される強いテーマ性を秘めたプログラミングと、確固たる技術に裏打ちされた精緻な演奏は彼らの独壇場。今回の名古屋公演でも、ほとんど演奏されない作品を含め、今彼らが一番演奏したいという曲を取り上げます。この選曲の理由についてなど、第2ヴァイオリンを務めるオリバー・ヴィレさんに語っていただきました。
ホール
今回の名古屋公演では「ルネサンス・ミーツ・モダン」というテーマでのプログラミングですが、なぜこのような特別なテーマを選んだかについてお話を聞かせてください。
ヴィレ
ご指摘の通り、特別なプログラムを持って日本に戻ってきます。私たちは過去の数年間、多くの著名な作品を、これまでとは違う環境においてみてきました。プログラムを見てお分かりのとおり、サンドイッチのように古典―現代―ロマン派の作品が挟まれています。これによってプログラムが全体的にとても古典的/保守的な構造を持つことに気づいたのです。とはいえ、非常に古い作品も長いこと知られていなかったがために、目新しい「現代的」な作品になってしまっています。このような違ったアングルから焦点を当てることで、いままでになかった音を聞くことが出来るでしょう。
長い間私たちはバッハの作品を演奏してきましたが、彼よりも前の作品に目を向けることを始めたとき、非常な衝撃を受けたのです。ルネサンス音楽の和音進行は私たちの想像を裏切るものでした。まるで20世紀の音楽のように、です。私たちは現代音楽とルネッサンス期の合唱曲などを研究し、素晴らしいコンビネーションを発見するに至り、それらを混ぜ合わせることとしました。これには私たちの録音をしているレーベルであるソニーも大変興味をもってくれて、私たちは「Bridges」という名前のアルバムを作成することが出来たのです。このアルバムの一部を含む、とても面白いプログラムで名古屋公演が出来ることを大変楽しみにしております。
ホール
名古屋の聴衆は東京などの聴衆よりも保守的だとよく言われます。例えば、海外からやってくるアーティストは大概、名古屋ではドヴォルザークの「アメリカ」やシューベルトの「死と乙女」といった名曲プログラムを演奏します。そういう風ですから、クスカルテットさんの「常に新しい、未知の作品を取り上げよう」という方針はとても興味深く思えます。今回の演奏会でも聴衆からどんな反応が返ってくるか楽しみではないですか?
ヴィレ
そうですね、どのような反応が起きるか見てみたいと思います。たいていの場合、聴き手は新しいこと、他との違いを発見することが好きなものです。このプログラムは聴き手にとって決して難しいものではありません。もちろん全く聴いたことも無いような曲が並んでいますが、実際に聴いてみれば、プログラムを見たときの印象とは異なると思いますよ(^-^)。これは4世紀にわたる興味深い旅なのです。これらの曲をすべて混ぜ合わせ、似ている点や全く異なる点を発見出来るというのは、現代に生きる私たちだからこそ可能なわけです。なんてラッキーなんだろうと思いますよ。
ホール
単純な質問で申し訳ないですが、演奏する時に一番心がけていらっしゃることって何でしょうか?
ヴィレ
私にとって良い演奏というのはその作品の言葉を感じ取ることが出来たときです。また全てが正しい瞬間に起こること、音が正しい場所にあること。しかし正しいとはいえ、私たちはメトロノームのように演奏をしようとはしていないので、正しい瞬間、正しい場所を見つけるのは確かにちょっと難しいことではあります。演奏というものは柔軟でなければなりませんし、音楽の流れに反応していかねばなりません。4つの声部は常に動いており、また他の声部と呼応しあっているのです。私たちは常にその音楽の言葉に合わせ、毎日異なる演奏をするように心がけています。ただし、わざとらしくならないように・・・。
ホール
長年にわたってカルテットの4人が協力してよい関係であり続けるのは並大抵のことではないと思うのですが、なにかコツのようなものってあるのでしょうか?つまりはそれがカルテットにとっての大切なことでもあるのだと思いますが・・・
ヴィレ
カルテットというのは時と共に成長していきます。(時間がたてばより明確な個性を持つようになるワインと同じようなものです。)私たちはいろいろな経験を共にし、共にキャリアを築き、共に考えを深め、全ての素晴らしい音楽を共に学んできました。17年の間に1人か2人、メンバーが交替したものの、これが私たちクス弦楽四重奏団としての個性を生んでいるのだと思います。現在のメンバーになって7年になります。ヤナと私は結成した1991年からこのカルテットで演奏していますが、すでに私たちの人生の半分をカルテットとして共に過ごしていることになります!
共に成長し、音楽上の経験を分かち合うことで、カルテットのメンバーは友達のようにもなります。オーケストラの団員同士よりもはるかに近い関係になるわけです。私にとって重要なことは、同じ音楽上の言葉を見つけること。そうでなければ一緒に演奏をするのはとても困難です。とはいえ音楽上の言葉というのは、成長することで変わって行くこともあり、時に奇妙な道に進んで行くこともあります。カルテットをうまくやっていく秘訣というものがあるかどうかは判りませんが、好奇心を失わないこと、探求心を失わないこと、は大切だと思います。
ホール
ありがとうございました。ところで、最後の質問ですが、今回の名古屋公演は2005年以来ですよね?もしその時のことで何か名古屋について印象に残っていることがあればお聞かせいただけないですか?
ヴィレ
名古屋ではこれまでに2度演奏しています!2003年と2005年です。どちらもスタジオ・ルンデで演奏しました。この会場でのシリーズはすでに存在していないようですが、とてもよく覚えています。とても暖かい人々、とても熱心な聴衆でした。2005年には名古屋で時間があったので、素晴らしい城(名古屋城)を訪れたりしました。それからとてもおいしい日本食を食べました。鶏の手羽をたくさんたくさん食べたのを覚えています!スタジオ・ルンデさんが閉鎖されたと聞いて私はもう二度と名古屋には戻って来られないと思ったのですが・・・再び演奏が出来る、そして私が間違っていなければ、とても新しいコンサートホールで!というお話しを聴いて、とても興奮しておりますし、楽しみにしております!